出生前診断その3 〜初期スクリーニングとNIPTの違い〜

2026.3.12

大分時間が経ってしまいましたが、前回、染色体異常に対する出生前診断には、

• 非確定的検査
• 確定的検査
があることを書きました。

今回は、非確定的検査としてよく比較される

• 初期超音波スクリーニング
• NIPT
について、その違いを書きたいと思います。

どちらも「診断」ではなく「可能性をみる検査」です

まず大切なのは、
どちらの検査も21トリソミー(ダウン症候群)を確定診断するものではないということです。
異常の可能性が高い場合には、
最終的に羊水検査などの確定的検査が必要になります。

 

21トリソミーに対する感度は大きく異なります

21トリソミーに対する検出率(感度)は、
初期スクリーニング 約70〜80%

NIPT 約99%
とされています。

つまり、初期スクリーニングでは一定数の21トリソミーを見逃す可能性があります。
一方でNIPTは非常に高い精度で検出できます。

 

初期スクリーニングは陽性的中率が高くありません

初期スクリーニングでは、赤ちゃんの首の後ろのむくみ(NT)や鼻骨、心拍などを総合的にみて判断します。
しかし、NTが厚い場合でも、実際には染色体異常がないことも少なくありません。

つまり、陽性と判定されても、実際には正常であるケースが多く含まれます。

このため、結果として不安が強くなり、本来は必要なかったかもしれない羊水検査に進む方が増える可能性があります。
羊水検査にはわずかではありますが流産リスクがあるため、この点は検査を選ぶうえで重要です。

 

NIPTは偽陽性が少ない検査です

NIPTは21トリソミーに対して高い感度だけでなく、偽陽性も少ない検査です。
そのため、不要な羊水検査に進む割合は初期スクリーニングより少なくなります。

ただし、NIPTでも陽性なら確定診断は必要です。
胎盤由来DNAをみているため、ごくまれに胎児と異なる結果になることがあります。

 

初期スクリーニングで形態異常がわかることもありますが、限界があります

初期超音波では、
• 大きな頭蓋異常
• 大きな心形態異常
• 重度の腹壁異常

などが見つかることがあります。

ただし、妊娠11〜13週ではまだ赤ちゃんが小さいため、見つけられる形態異常には限界があります。心臓や顔面、小さな臓器異常などは、この時期にはまだ十分に評価できないことがあります。

 

形態異常の評価は中期スクリーニングが中心です

赤ちゃんの形態異常を詳しくみるには、妊娠18〜22週ごろに行う中期超音波スクリーニングが重要です。

この時期になると、
• 心臓
• 脳
• 消化管
• 腎臓
• 四肢

をより詳細に評価できます。

そのため、初期スクリーニングで問題がなくても、中期スクリーニングは非常に大切です。

当院では20週ごろに妊婦健診内で全例に中期スクリーニングを行っております。

 

どちらを選ぶべきか

初期スクリーニング
→ 超音波で赤ちゃん全体を早期に確認できる

NIPT
→ 21トリソミーに対して非常に高精度

それぞれに役割があります。

何をどこまで知りたいかによって、選択は変わります。

当院では

検査のメリットだけでなく、
限界やその後に必要となる可能性のある検査についても十分説明したうえで、
ご本人が納得して選択できることを大切にしています。

 

それぞれの特徴を簡単にまとめると、以下のようになります。

項目 初期スクリーニング(NT測定など) NIPT
検査方法 超音波検査 母体採血
検査時期 妊娠11〜13週 妊娠10週から15週5日
21トリソミー感度 約70〜80% 約99%
偽陽性率 約5%前後 約0.1%前後
陽性的中率 低め(年齢により差が大きい) 高い(ただし年齢で変動)
形態異常の確認 一部可能 不可
確定診断 不可 不可
陽性時に必要な検査 羊水検査など 羊水検査など

初期スクリーニングでは、NT(首の後ろのむくみ)が厚い場合でも、実際には染色体異常がないことも少なくありません。
そのため、結果として不安が強くなり、本来必要ではなかった羊水検査へ進む方が増える可能性があります。

一方でNIPTは、21トリソミーに対して非常に高い感度を持ち、偽陽性も少ない検査です。
ただし、NIPTも確定診断ではないため、陽性の場合には羊水検査による確認が必要になります。

なお、初期超音波でみつかる形態異常には限界があります。
赤ちゃんの心臓や脳、消化管などの詳しい評価は、妊娠18〜22週ごろに行う中期超音波スクリーニングのほうが適しています。